マスコミのバッシング・扇動のために、大事故・大災害時に合理的な活動が出来なくなるかもしれない。
阪神淡路大震災の初動で、消火活動だけではなく救助活動にも力を入れてしまったため、結果的に火災が抑えられず被害が広がってしまった。その反省を生かして、”震災時は救助活動よりも消火活動を優先にする”というマニュアルが神戸市消防局にある。
神戸新聞Web News 72時間の壁 震災10年 守れ いのちを 第2部
マニュアルの狙いは、生存者の総数を大きくすること。
建物の下敷きになり何処にいるのか、そして生きているのかどうかさえ判らない人を救助することよりも、初期に消せば被害の広まりが抑えられる消火活動を優先する。
この方針のポイントは、”消火活動優先”よりも”危機に瀕している人たちを意図的に見殺しにする”ということ。
危機に瀕している人たちを素通りし、助けを求めてくる人たちを振り払い、消火活動をしなければならない。消火と救助のトレードオフをしっかり頭に叩き込んでおかないとスタンドプレーに走り、救助活動をしてしまう隊員も出てくるだろう。
仮に強い意志を持って、消火活動に専念しても、精神的な負担は大きいだろう。中には精神的に壊れて数日に渡る活動に支障が出てしまうケースもあるのではないか?
そしてやっかいなのが、追い討ちをかけ兼けるだろうマスコミ。
尼崎脱線事故では、事故現場に居合わせながらも救助活動に参加出来なかった2人の運転手が謂われ無い批判を浴びた。救助活動を期待される消防士であれば、その分多くの批判に晒されるだろう。
マスコミの扇動により、救助活動第一という世論が作られている。そしてそれに当てはまらない行動をとった場合はバッシングを受ける。なにしろ当のJR西日本でさえも、2人に対して「処分を検討」などとスケープゴートじみた扱いをしている。犠牲者を後にしてまでも、職務を全うすべく指揮に従った職員に対してすることだろうか?(注1)
このままでは、大事故・大災害の際に”救助優先”とスタンドプレーを始めるケースが多くなってしまわないか?緊急事態の際には、なによりも指揮命令系統に従った行動が求められるのにもかかわらず。
Reference:
- asahi.com: 現場に残れば… 同乗の2運転士が手記 JR脱線 – 関西 : ここまで2人の運転手を追い込む必要はあるのか?
- 善悪の彼岸/ウィンストン・チャーチル : 合理的(戦略的?)見殺しの一例
(注1)
ここでは、2人に出社させた指示そのものの意義は問題にしない。あくまでも、現場にいた2人が指示に従ったかどうかを問題にする。
#事故からずいぶん時間が経ってしまったが、少し時間的な余裕が出来たので書いてみた。
#2005-06-06: FPNに投稿しました。 FPN-緊急事態における合理的見殺しと、マスコミによるバッシング・扇動
#2005-06-09: はてなブックマークに載ってた。 はてなブックマーク – Orokot:緊急事態における合理的見殺しと、マスコミによるバッシング・扇動 / はてなブックマーク – FPN-緊急事態における合理的見殺しと、マスコミによるバッシング・扇動